佐渡演習林は文部科学省教育関係共同利用拠点に認定されました。拠点名:佐渡島の多様な自然環境を利用した教育関係共同利用拠点期間:令和4年4月1日~令和9年3月31日
2012年より文部科学省の教育関係共同利用拠点に認定され、全国の大学等の実習を受け入れています。佐渡の多様な自然環境を活かし、利用者のニーズに合わせた様々な実習を行っています。演習林だけでなく、佐渡自然共生科学センターの他施設(臨海実験所、朱鷺・自然再生学研究施設)と協働し、佐渡島の森・里・川・海の各生態系の特徴や繋がりを学ぶ共同利用実習も行っています。
ツバキの仲間は綺麗な花を咲かせるため園芸木として使用され、日本を含め温帯地域において広く分布しています。しかしツバキキンカクチャワンタケ(通称ツバキン)というツバキの花に感染する植物病原菌が花を茶色く変色させる花腐れ病を引き起こすことで、ツバキの園芸的価値を低下させることが問題になっています。ツバキンは日本のヤブツバキ花上で初めて発見、報告されており、現在では世界各地のツバキ属樹種上で確認されています。一方で自生するツバキに感染する本菌の生態的情報はまだまだ不足しています。
私は日本に自生するツバキ属樹種(ヤブツバキ、ユキツバキ、サザンカ)におけるツバキンの生態について研究しています。これまでヤブツバキやサザンカの花上では本菌が確認されていますが、ユキツバキの花上に感染しているという学術的記録はありませんでした。しかし実際に開花時期に調査をするとユキツバキでも感染していることが確認できました。
修士に進学してからは県外調査が増え、さまざまな場所に調査しに行くことができました。もちろん調査自体も楽しいですが、調査地の綺麗な風景や地元のお店に訪れることの楽しさなどを知ることができ、さらにフィールド調査に病みつきになりました。
(2022年度卒業 佐渡研究室修士2年 堀田崇仁)
里山地域においてよく見られるシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)は、カエル類を中心に小型哺乳類、爬虫類、鳥類など様々な食性が確認されています。その中で、佐渡島においては他地域では確認されていない、ハゼ類(魚類)を河川で捕食する生態が確認されています(長谷川・伊藤 未発表)。このハゼ類は通し回遊という生態を持ち、河川で孵化した後海へ下り、ある程度成長しまた河川へと戻って来ます。そのため、ハゼ類の体内には海由来・河川由来物質が蓄積されており、このハゼ類を捕食するシマヘビは、陸棲動物でありながら水領域物質を引き上げる運搬者として機能していることが考えられます。
この森川海を繋ぐシマヘビの機能を調べるため、私の研究ではシマヘビの鱗及び餌生物のハゼ類やカエル類に含まれる炭素・窒素安定同位体比を測定し、シマヘビが生涯にわたってどの程度ハゼ類を利用しているのか、ハゼ類は餌生物としてシマヘビにどの程度貢献しているのかを明らかにすることを目的に研究を行っています。
(2022年度卒業 佐渡研究室修士2年 渡部侑果)
私は佐渡演習林内のダケカンバ相互移植試験地を用いて、樹形と産地・環境の関係について研究しています。ダケカンバは、亜高山帯~高山帯に分布し、雪害や風害の大きい場所では低木や匍匐状といった形状をとります。高標高に分布するため、地球温暖化の影響を受けやすい樹木です。そのため、温暖化の影響評価を目的に、ダケカンバの相互移植実験が行われています。実験では環境が異なる複数各所に植栽するため、ダケカンバが急激な環境変化にどのように反応するかを見ることが出来ます。
佐渡演習林内の二か所の試験地では、成長具合や樹形が個体によって様々です。このことから、産地や試験地の環境が樹形に大きく影響すると考えられます。私は、佐渡試験地の個体の樹形を調査、産地・試験地の環境と比較し、樹形が地球温暖化へどのように適応していくのか、大きく影響する環境要因は何かを明らかにしたいと考えています。
(2022年度卒業 佐渡研究室4年 棚田みのり)
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